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そして「僕」は固唾を呑み込んだ。-未公開-
電車の中で思い出し笑い
人に見られて 赤い顔して眠ったふり
うれしはずかし うれしはずかし朝帰り
たまにはこんなスリルもいいわ
出典 「うれしはずかし朝帰り」より
DREAMS COME TRUE
電車で向かいに座っていた男は駅に着き、立ち上がり降りていった。しかし・・・
座っていた席には定期らしきものが忘れてある。視線を上げると(降りて行った男の)隣に座っていた男と目が合った。
「どうする」・・・「 」一瞬の判断が明暗を分け・・・僕は「傍観者」になった。
男は立ち上がり「定期忘れていますよ」と降りて行った男に向かって、電車内から声をかけた。
ここで物語はハッピーエンドを迎えるのだと思っていた。ただこの物語の作者は「試練」を用意していた。
イヤフォンをしていて音楽でもきいているのか、男の「声」は届かない。
だが、男には迷いが無かった。電車を降りて男に追いつき肩を叩いて定期を渡した。
電車からの「扉が閉まるよー」の報せ・・・息を凝らし、息を詰め、息を殺した。
定期を受け取った男は、頭を下げ、手話のように手を動かしていた。
男は「それ」を真っ直ぐ受け止めていた。その行間に扉は閉まった。
ゆっくり走り出す電車。電車を見ようとしない男
少しづつ小さくなって、見えなくなった。
そして「僕」は固唾を呑み込んだ。
目を閉じると、うれしはずかしそうに佇む男の残像に「神さま」と「朝帰り」が重なって映写された。
現われては消える・・・
嬉しいのか・・・はずかしいのか・・・
夜を連れて朝に帰っていく・・・
まさに「神さま」は神出鬼没だ。
神出鬼没(しんしゅつきぼつ)
自由自在に様々なところに現れたり巧妙に隠れたりすること、居場所がつかめないこと
枯葉が土に還るために傷いた「穴」から射すヒカリのように
おはようございます。2020年7月8日(水曜日)
それでは第九十一話「はじまり」です。
今日のお話は「終わり」です。
文章の所在が分からなくなったり、言葉では辿り着けないこともありますが・・・
今日も最後まで読んでくれて本当にありがとうございます!
今日という一日に「少し」の 勇気 を
そんな【帰り道】を
それではまた明日。